欲しいもの(とても器が小さい話)

高校生の頃に毎日部活とアルバイトをして、月に15万ぐらい所得がありましたので、欲しいものはすぐに買っていました。大阪の田舎の高校生の思い付く欲しいものなので、大きなものはバイクだとか車だとか、こまごまとしたものはとにかくいろんなものを買いました。その経験の中で買ってよかったもの、買わなくてよかったものを自分で判断して理解し、成人してからはものを買うという行為にあまり興味がなくなりました。ほとんど本だけ買って過ごしてきたと思います。

調理師としてのスタートを切ってからは技術を身につけることを第一に考え、先輩の真似をしてできるだけ早く成長しようと思ってました。技術というのは経験の量で決まると気づいてからは(これは最近はそうではなかったと思ってます)、知識を使って早く技術を伸ばせないかと考え、本を大量に買って勉強と仕事を並行してやってきました。

でもそれは自分のことであって、他人はそうではありません。他人は他人の価値観があります。

ブラックマヨネーズの漫才でボーリングというのがあります。ボーリングの玉を買うにあたって指を入れる穴の大きさが小さめにするか迷う吉田に対し、小杉が小さかったら指が抜けないと言います。すると吉田はそこまで小さい話してないと怒ります。

調理師は技術職ですので、働く一番の目的は技術の習得ではないかと思います。技術の習得にもうこれでいいということはありません。でも人はそれぞれ決めたゴールがあって、そのゴールを極端に越えてしまうほどの努力はしません。そういう人は口ではもっと仕事が欲しいと言っているのに、習熟度を見てこれはどうかこれはどうかとすすめていくと突然そこまでやりたいわけではないと拒否します。例えば肉まんの口が閉じれたらゴールなら別にひだがきれいである必要はないように。小さい穴の話を始めた吉田に極端に小さい穴を想像してアドバイスした小杉。するとそこまで極端でなくてもいいと怒る吉田。そこまで極端でなくてもいいと決めた他人のゴールを上の人間が探しにいかないといけません。

別に欲しいものが技術ではなくて物でもいいと思います。いい車に乗りたいというのは我々の親方や先輩の大きな目標の一つだったと思います。でもいい車にのるためにはお金を稼ぐための技術が必要だと思いやってきたはずです。僕は別にお金が欲しいわけでも車が欲しいわけでもなく、技術を得るためにはどうすればいいのかをずっと考えて、自分で見つけた近道を含め従業員にも教えていましたが、技術職なのに技術はそこまでいらないと思っている人にどう接したらいいのか全くわからない。そこまでいらないのそこまでを紙に書いて説明して欲しい。

いままでは頑張ってという意味でこういうメッセージを書いてきましたが、頑張らないといけないのは若い調理師ではなく私かもしれません。