常に従業員に意識させていることに機会を逃さないというのがあります。
日常的な仕事の中で例えると、中国料理の調理場では調味料が鍋のところに並んでいます。すぐにその調味料の内容を覚える人と覚えない人がいます。覚えている人は親方や先輩が鍋を振っている姿が少し視界に入っただけでも「この料理にはこの調味料が入るんやな」とわかります。まだ教えてくれない段階でも少しの手がかりが重なり料理を覚えることができます。調味料を覚えてないと見てもただの風景として心に残りません。
若いうちから中国語、中国食文化、中国の歴史を学んだほうがいいと思います。中国とは全く関係ない中国料理をして暮らしていくなら必要ありませんが、外国の文化として尊重していくためにはその勉強が不可欠です。それ以外にも学ぶメリットがあります。
中国に旅行に行きます。目的は最初は食べ歩きで次は買い物でしょうか。しかし滞在時間のなかで食べ歩きと買い物はそこまで長い時間ではありません。食べ歩きだけで学べることも少ないです。それ以外の時間はどうですか。食べ歩きの店までの道のりは、ホテルの中での行動は、調理師のレベルを上げるために役に立ちますか。
中国語が理解できれば食べ歩きまでの道のり、自由な時間全てを中国語の勉強にあてることができます。食文化に興味があれば買い物の棚からその地域の中国料理の傾向が見てとれます。成都の酒売り場の棚には紹興酒はほとんど売っておらず、上海やこの間行った青島のスーパーの油売り場には成都で頻繁に使われる菜種油はありません。知ってるか知らないかで中国料理に対する理解が深まるのか表面だけで終わるのかが決まります。調理場の窓越しに調理師に料理を聞くこともできますし、タクシーの運転手に土地の料理の傾向を聞くこともできます。
忙しいのに成長しない人がいます。それは本人にとっていま取り組んでいる作業だけがスキルアップにつながることで、しかも集中もしてなくて得るものが少ないです。しかし作業と作業の間の動きであったり作業中の周りの観察、動き全てをスキルアップの材料にすること、それが機会を逃さないということです。