dancyu2017年9月号が発売されました。中華特集なので、ぜひご購入下さい。
その中で特に印象に残ったのが今清水隆宏さんの上海炒麺の中の、中国大陸の料理は「旨みが薄い」というくだりです。
中国料理って現在はチキンパウダー、濃縮鶏汁(液体チキンパウダー)を駆使して味を重ねていきますが、昔は今ほどたくさんは使わず、うま味の中心は味の素でした。四川でも油と塩を利かせて素材の味を出す料理が多く、「旨みが薄い」ことによって毎日でも食べられる味だったと思います。
四川料理の街場の店は昔からそんなにいいスープで料理をするというわけではなく、薄いスープまたは水で調理してました。
うちの店も清湯、白湯ありますが、料理はほとんど油、塩、清湯でしてます。これを例えば水に変えたとき、野菜の炒めを水に変える勇気はないのですが、野菜を手作りのラード、塩、水で炒めたら、もっと素材の味が出てきて中国の家庭に近づいていけるのではないか。うちの嫁さんの実家は茶碗蒸しを水でしますが、より卵の味が出ると思います。でもまだその価値観には達してません。
中国料理は粗材細料、特別ではない素材をすごくおいしくすることが特徴なのですが、その特別ではない素材が例えば近くの畑でとったばかりの野菜、屠殺したての肉と、ブランド肉、ブランド野菜ではないにしろそれなりにいいものでした。
特別な素材を使ってもっと良いものを作ることは僕は否定しませんが(知り合いの中国人は否定してます)、特別な素材を使って、素材の味を活かす薄味で…というのは中国料理ではないです。僕の専門の四川料理、台湾料理で言えばある程度の油、ギリギリの強い塩加減、この二つがあってこそものの味がはっきりしてきます。
最近の成都の料理はうまみを重ねて全然おいしくないんですが、僕は川菜博物館で聞いた「昔(100年くらい前)の料理は一つの料理につき調味料を4か5種類しか使ってなかった」ぐらいのところを目指して、中国らしい「旨みの薄い」料理を追究していきます。