以前来ていただいた調理師学校の外来の先生が心に残ることを言ってましたので、忘れないうちに書き留めときます。
うちの店の従業員みなさんにお伝えしてることが、お客様は従業員のスキルアップにお金を払っているわけではないということです。
どういうことかと言いますと、飲食店はお客様がご来店されて、そこで仕事が生まれ、その仕事を通じて自分たちの腕が上がるわけです。でもお客様は従業員の腕をあげようとご来店されるわけではなく、おいしいものを食べようと思ってご来店されるので、従業員は自分のスキルアップより先にお客様の満足を考えるべきだということです。
例えば僕が作る料理と下の子が作る料理、同じ値段で選べるのなら、ほとんどのお客様は僕の作る料理を選びます。下の子は自分の練習のためにお客様の料理が作りたいと思います。下の子は料理を作りたい、お客様はどちらかというと料理長の料理の方が食べたい、そこでお客様の料理を使って練習してもいいでしょうか。それが「お客様は従業員のスキルアップにお金を払っているわけではない」ということだと思います。
料理がうまくなりたいなら、お客様の料理以外で料理すればいいんです。まかないなどで腕を磨き、料理長と同じ味ができるようになって初めてお客様の料理が作れる。それが普通のレストランのあり方、従業員の気の持ちようだと思います。
スキルアップの方法はそれだけに限りません。たとえば担担麺を1日500杯作るところがあったとします。毎日担担麺ばっかり500杯作って嫌やなと思うのか、担担麺500杯をいかに早く、いかに同じ味でお出しできるか努力するか、考え方一つで変わります。同じ味、同じ早さでは成長が止まってますから、お客様には迷惑でなくともスキルアップにはなりません。逆に同じ味、同じ早さになるように努力するのはお客様に失礼です。
同じことをして何を感じられるか、何を糧にするかは人それぞれで、そういうところが響く人、響かない人は僕がコントロールできないと外来の先生はおっしゃってました。身も蓋もないですが従業員より僕が響いたので、備忘録として書いておきます。