若い子が続けるために

若い子が続けるために

若い従業員に常に言ってることで、「人よりも秀でたものを見つけて伸ばしなさい」というのがあります。一年目のときにタレントのお客様の誕生日のためにニンジンで花を彫らされました。当時花を彫れるのは僕と先輩の二人だけだったので、手分けして10個ずつ、先輩はすこし余裕があったので台の部分をカボチャで、18時間労働のあとにコツコツ彫ってました。

花を彫らせてもらうことによって店から信頼されている感覚、そんなのはあってもなくてもいいと思います。思うか思わないかは本人の自由です。それよりは自分がいないと花は彫れないみたいなちょっとしたことでいいので、その店に自分がいる価値を見つけて、それが親方よりも上になるまで努力することが大切だと思います。努力の話で大根の桂剥きのことを書きましたが、従業員が10月から12月末まで毎日一本桂剥きをしたら、私よりうまくなってると思います。親方は全ての部分で自分より秀でているわけではなく、どこかでサポートできることをそれとなく見てもらうと、苦しくなっても続けることができるのではないでしょうか。

先輩は基本的に自分よりうまくなって欲しいと思ってないような気がします。目立つと邪魔をされることもあります。シェフや先輩に勝つものを得るためにはどうすればいいか。腕が経験年数で決まるなら一生勝つことはできません。時間は全員同じですから1日24時間を越えて働くこともできません。でも先輩が趣味をしている時間に勉強をすれば可能性は増えます。知識がつくと答えまで早くたどり着くことができますし、いままでのやり方を変えることもできます。そして何より知識がある先輩とない先輩を峻別することもできます。先輩のやり方が間違ってるなら心の中でアドバイスして上げたらいいんです。それによって心の余裕が生まれますが、結果調理場の雰囲気は悪くなります。それでいいと思います。