全力で働く
欣葉で働いていてずっと感じていたことは、中国人は全力で働くということです。中国は昔は商店に行って目の前にあるものを見せてと言っても、これはないと言って見せてくれなかったりするのが当たり前でした。国営企業で働いても働かなくても給料同じだとこうなるのかと感じてました。でも親方と、同じく一緒に働いていた領事館の元料理長は違いました。とにかく手を抜かない、とにかく真剣に料理をしてました。
23歳のときに入社していろいろなアドバイスを受けました。最初に叱られたのは2日目。初日にネギのみじん切りをしたら「やっぱりよそで働いてた子はうまいね」と誉めてくれます。でも次の日にネギを切ったら「昨日のほうがうまかった。だんだんうまくなるのが技術職、だんだんうまくならないなら技術職はやめた方がいい」といいます。それが強烈に心に残って今でも従業員に伝えています。
仕事が遅いと「早くしなさい」とどこでも言われると思います。親方も言います。でもそこで早くなると今度は「早くできるなら何で最初から早くしないんだ」「手を抜くな」とまた叱られます。当時はランチの11時から14時で毎日200人来店があり、従業員は5人でクローズタイムもなく22時まで。常にこういう状態ですから早くする、毎日早くなることが求められていました。
私は今は従業員に早くさせるのは無理だと思ってます。その代わり全力でやりなさいと言ってます。遅いのはある程度仕方がないですが手を抜くのはダメです。100m走を15秒で走る人が15秒で走るのと10秒で走る人が14秒で走るのはどちらが早く見えるでしょうか。14秒のほうが速いですが15秒のほうが一生懸命です。力を抜いてやる仕事は料理に出てお客様に伝わります。全力でしないと伸びません。
全力ですると疲れますし、疲れたらできるだけ動きたくないと思います。するとできるだけ少ない動きで仕事をこなそうと考えるようになります。倉庫にものを取りに行くのも普段二回でやることを一回で終わらそうと工夫します。その工夫に本人が気づく近道は困ること、不自由になることです。疲労というなりやすい状況でそれに気づくきっかけを作る。ランチタイムで9割体力使って夜は頭で考える。そういうやり方に慣れると仕事が終わったあとでも「今日は疲れたから勉強しようか」と思えます。
身体が疲れたら頭を使う、頭が疲れたら身体を使う、その日々の繰り返しで人よりも早く成長することができます。息抜きは必要ありません。