[四川料理巴蜀]のかくし味

Blog of Hashoku

麻婆豆腐

当店の人気ナンバーワンでクレームもナンバーワンです。

 

麻婆豆腐が塩辛いとよく言われます。面と向かっても言われますし、食べログにもよく書かれます。味付け間違えたものを出しやがってとも書かれます。当店の麻婆豆腐は塩辛いです。でも四川の麻婆豆腐はもっと塩辛いです。

 

何が塩辛いのかと言いますと、まず塩が多いです。挽き肉が塩漬けではないかとの指摘もよくありますが、当店の挽き肉はむしろ薄いです。日本で一番薄いかも知れない。調理師ならわかると思いますが、肉3200グラムに醤油200グラム、砂糖40グラム、それだけです。味忘れたのではないかというくらいに薄いです。塩はしっかり入れます。麻婆豆腐に限らず塩が薄い料理は中国料理ではありません。

 

花椒が塩辛いです。花椒に塩は全く入っておりません。しかし花椒には塩分を強く感じさせる作用があり(減塩食の開発に山椒のこの作用を利用しようというアイデアがあるくらいです)、お客様のご指摘の塩辛いはほとんどそれです。花椒を入れずに作った当店の麻婆豆腐はむしろ味が薄いです。でも麻婆豆腐というのはしっかり味がついておりかつしっかり花椒の香りとしびれがあるものですので、花椒を入れないという選択肢はないです。うなぎの山椒の位置付けとは違います。鮎の蓼とも違います。肉がなくても麻婆豆腐は作れますが、花椒がなくては作れません。豆腐と同じくらい大切な材料です。

 

当店は昔から中国の味を提供しています。私の美味しいと思うものをお出ししてるわけではありません。日本人の美味しいものを中国料理に表現するレベルまで私はまだいけません。それなら中国の味をそのまま提供するほうが中国料理らしくなります。塩味は多い方が美味しい、料理は手間をかければかけるほど美味しい、中国料理の価値観は日本料理とは正反対です。当店の麻婆豆腐は塩辛くて、それが四川の麻婆豆腐です。

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