[四川料理巴蜀]のかくし味

Blog of Hashoku

お知らせ

形に残る仕事

巴蜀を開店して15年がたち、その間に様々なことがありました。最初はかなり暇な店から始まり、その時に自分のスキルアップのために一人調理師学校というやり方を考え、自分で買った材料を自分で調べながら調理し、食べていました。

七年ほどたったころに調理師学校の先生から本の出版のお誘いがありました。その時にはすでに一人調理師学校のレパートリーが増えてましたので、しっかり準備できたと思います。個人のスキルアップと並行して店の知名度を上げる努力もし始めたころです。

その後高単価のニーズが増えてきたころに月隈から美野島に移転しました。従業員を継続して雇い、それまでの修行や自分が得た知識を従業員に教える日々が始まりました。これは残念ながら最後まで実を結ぶことはありませんでした。

お客様が増え、従業員が増え、所得が増えました。私の店は売上高は大したことないですが、残る最終利益率はかなりあると思います。原価率が低いわけではなく、ロスが全くないためです。従業員には店が有名、個人が有名、所得が多い、そのどれを目指したとしても彼らにある程度の道が拓けるように準備してきたつもりです。でもそれは無理でした。

料理はお客様がお召し上がりになったあと何も残りません。しかしお店でお出ししたレシピ、お店が育てた従業員、それは形に残る仕事としてお店に残り続けます。建設会社が建てたものがずっとその場所に残るように、私の作った形もここに残っていって欲しかった。

私、荻野はもうすぐ巴蜀を退職します。自分のイメージ通りにスキルアップができて、自分のイメージ通りに店が有名になって、考えられないほどお金を残しました。でも従業員の教育、自分の勉強にはほとんど成果をあげられなかったので決意をしました。従業員には君が変わるか僕が変わるかと指導してましたが、僕が変わるほうが早いと思います。今後はもっと形に残る仕事を目指します。

巴蜀の今後は元従業員が受け継いでくれる予定です。巴蜀の名前のまま私が引き継ぎをし、しかるべきタイミングで彼の独自の店になると思います。私ができなかったことを彼が受け継いでくれたらこの店を作った価値が少しはあるのではないかと考えています。

15年間ありがとうございました。

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