[四川料理巴蜀]のかくし味

Blog of Hashoku

味をつけるときの考え方

味付けの考え方

イカの目入れが細かいとタレを少なくすると書きました。きっかけは台湾料理のときに、いくらきれいな切り込みを入れても副材料との兼ね合い、味付けの濃さでかえって料理がダメになってしまうと言われたことです。それでは例えばエビとイカを同じ味で炒めるときはどうするのがいいでしょうか。

①むきエビは表面がツルツルしていて味が入りにくいので、一般的には下味を入れると思います。エビとイカを一緒に炒めるときは切り目の多い切り方だとエビとイカの味のからみかたが違うので、同じ味にはなりません。イカにあまり目をいれずエビと同じ濃さの下味を入れて炒めるといいと思います。

②それではイカを細かい花切りにしたければどうするのか。エビに下味を入れ、イカは薄味の下味を入れて一緒に炒めることで、エビとイカに同じ味のタレがイカだけにたくさんからむので同じ濃さになります。

③それではエビとイカと野菜を一緒に炒めたらどうですか。エビとイカは②と同じような味を入れますが、エビは下味少し薄めでもいいと思います。野菜は水分を抜くために油通しします。これがボイルまたは塩ゆでだとまた変わってきます。たれの量は少なく、塩分は少し強め、片栗粉は少なくさらっとさせます。野菜の表面にタレが少しからみ、一口目は十分味がしますが野菜に塩味が入ってないのでちょうどいいという感覚です。でもこの味のあるものとないものの炒めあわせは素材によって毎回違うので難しく、あまりやりたくありません。

④魚の切り身をズッキーニで巻いて蒸してから塩味のあんをかける料理があります。従業員が魚の切り身に下味を入れて生のズッキーニを巻いて薄い味のあんをかけてお客様に出したらはっきりしない味だと言われました。どうしたらいいでしょうか。

食べたときに薄いあんの味がして、そのつぎに味のないズッキーニの味がして、最後にやっと魚の下味がきます。魚の下味が十分あるのならあんをかけるのではなく下にしいて、ズッキーニのお客様の口に最初に触れるような部分に少しだけ直接塩を振れば感じかたはだいぶ違うと思います。でもそれは中国料理とは違ってきますので、ズッキーニに塩で下味をつけて、その分魚の下味を薄くして、上からかける餡は塩味濃いめ、量少なめ、とろみ薄めでやるとはっきりとした味で塩辛くないバランスが取れた料理になるのではないかと思います。

四川料理の炒めものはドロッとしてタレが多いのが特徴です。昔はそれを忠実に守ってましたが、ドロッとしてタレが多くて塩味が強ければ食べていて疲れます。ドロッとして塩味が薄ければはっきりしない味になります。皆さんが想像されるエビチリは、お客様のお召し上がりになったあとの皿にたくさんソースが残って捨てられます。それだったらタレの量をコントロールしながら一口目からはっきり味があって、最後まで香りがあって美味しくて、食べ終わって疲れない中国料理の方がいいのかなと思います。油が多すぎるのも今は嫌いです。タレを少なくすることで油の量のコントロールも容易くなります。

味付けのストライクゾーンが広い人(ぼんやりとまとまった味を作る人)はたくさんのお客様にたいして受け入れられますが、経験とともにストライクゾーンは自分で狭めて攻めていくべきだと思います。

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