[四川料理巴蜀]のかくし味

Blog of Hashoku

香りがある料理

宮保鶏丁とそれ以外の宮保味の味付けのやり方の意味を考える

宮保味に碗献(混合調味料)は相性が悪いと思ってますが、それはなぜかを説明します。

碗献を使ったやり方の宮保鶏丁は、
①鶏を油通し→唐辛子と山椒炒める→薬味炒める→鶏を軽く炒める→碗献入れて仕上げる
②唐辛子と山椒炒める→鶏を炒める→薬味炒める→碗献入れて仕上げる
になると思いますが、例えばエビや牛肉、牡蠣などの材料に②のやり方を採用してるでしょうか。

宮保は唐辛子を焦げる寸前まで炒めた煳辣という香りと薬味を炒めた香りに荔枝と呼ばれる酢の多い甘酢味を絡めた料理です。①のやり方で煳辣を作ったあとに薬味を炒め、片栗粉の入った荔枝のたれを絡めた場合、唐辛子山椒を炒めた香り、薬味を炒めた香りは片栗粉のとろみに包まれてしまって香りが立たないのではないかと考えます。

対して投げ込みと呼ばれる調味料を順番に入れていくやり方ですと、唐辛子山椒を炒めた香り、薬味を炒めた香りにとろみのないスープ(水分)を加えて両方の香りを移すことが可能で、そのスープに調味料を入れることによって最終的には香りの多い料理を作ることができます。

そして②のやり方でやる宮保鶏丁ですと、唐辛子山椒薬味の香りはすでに鶏肉に移っていることから、とろみのあるタレを加えても香りが全て片栗粉に包まれることはなく、短時間加熱による酢が飛ばないメリットもあると最近思いました。でも投げ込みと香りの出方は違います。

混合調味料を使った料理は味にまとまりがあって好きではありませんが、味にまとまりがあることがお客様にとってメリットである部分は多いため、採用しているお店も多いです。私は宮保のような薬味が大きい料理(薬味がみじん切りになってない料理)は、薬味を炒めた香りが料理全体に回る前に料理が仕上がってしまうのではないかと考えてます。

修行僧が塀を飛び越えて食べに来るスープという意味の仏跳墙という料理があります。仏跳墙にはとろみのないスープを蒸すものととろみのあるスープを蒸すものがあります。とろみのないスープは素材の味がスープに出やすく、とろみのあるスープは素材の味が出にくいです。スープを食べるのか具を食べるのか、この料理に関してはそのためのとろみではないかもしれませんが、その違いを出すことはできます。

現在の中国料理は多種多様なやり方があります。それがいいか悪いかではなく、どのやり方を採用するかは調理人個人に委ねられています。私の作る台湾料理のイカの宮保は、タレが少ないです。それはなぜかというとイカの目入れが細かいからです。料理って考えることが多くて本当に難しいですが、考える材料を共有できたらうちの料理は誰でも作れるようになります。

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