やりたくないことも覚える
従業員をみていると、自分のやりたいこととやりたくないことを選択して覚えようとしてるように感じます。
例えば将来の自分のお店のイメージがあって、それに沿うものを覚えたい、将来のイメージがなくても自分の興味のあることだけ覚えたい。それは自由だと思いますが、自分で自分の首を絞めています。
フレンチの調理師と話をしていたら、フレンチはお客様が「シェフの作った料理が食べたい」という動機でご来店されると言います。僕は中国料理はお客様が「この料理が食べたい」という動機でご来店されるように感じています。八宝菜がお好きなお客様はどこに行っても八宝菜をご注文されます。今日は上海料理やからトンポーロー、北京料理やから地三鮮、広東料理にいけば咸魚肉餅、台湾料理なら玉蘭中巻なんて意識してお召し上がりになるお客様はほぼいないです。お店側もそれがわかっているのでどこの店も同じメニューでやっています。
中国料理でも強烈な個性のあるシェフの店はフレンチのような感覚が成り立ちます。でもそれは一握りです。僕が知ってる限りそれができている同世代のシェフは一人だけです。
自分の興味のあることだけ学んでお店をしたときに、自分のできる料理で勝負することになります。お客様はそのメニューリストの中から自分の好きなものを選んでご注文されます。その時、多くのお客様が自分の好きなものがなかったらお店は成り立つでしょうか。今まで興味のなかったメニューのなかにそのお客様の頼みたかったメニューがあるかもしれません。そういう意味で自分で自分の首を絞めていると言っています。
欣葉で台湾料理を学んだときに、自分の口に合わない料理がありました。自分の口に合わない料理は自分の味ではありません。どうしても自分の好きな味に近づけてしまいそうになるなかで、その料理をいかにうまく作れるかが将来の糧になると思います。好きなことに目を向けるのは当たり前のことだと思いますが、独立してお客様の要求に応えるためにはむしろ自分の興味のないこと、自分の苦手なことを減らしていく努力が必要になってきます。